20211002

杜野凛世さんの【をとめ条約】だが、ひとめ見て胸を撃ち抜かれ、コミュを読んで地に倒れ伏した。これ、おれの、好きなやつ……。

ということで短歌をやっていこうと思った。
しかし、凛世さんのことはよく知らない。凛世さんに対するイメージでやろうにも、今回は【をとめ条約】という具体的なエピソードがあり、どうしても歌の視点が凛世さんになってしまう。困った。

どういうことかと言えば、短歌というものの私性というやつで、基本的にはその歌の主語、視点は「わたし」になるというものである。（余談極まりないが、葛原妙子や水原紫苑で短歌に出会ったので、あんまり「私」と言われるとぴんとこないところもあったりする。）

二次創作でアイドルについて作るとき、この視点（というか視座）は非常に難しくて、簡単に言えば、このアイドルはこんなこと言わない。であり、また、このアイドルはこれは知らない、ということでもある。

前者はニュアンスはずれるが、解釈と言ってもいい。そもそも公式ではないことを描き、語る以上、そこは非常に気を使うし、使うべきところでもある。私は凛世さんのことをよく知らないので、ほんとにこういうことを言うのだろうか／言わせてもいいのだろうかという判断は難しい。一定以上追いかけ、慣れ親しんでいて、自分のなかにキャラクター像が確立していれば、（正誤善悪は別にして）これが私の◯◯です、とお出しできるのだが、そこまでいくのはなかなかに大変である。公式との解釈違いとかもあるしな。

後者もまた繊細な事柄で、ゲームのプレイヤーである「わたし」の視点と、いわゆる神の視点は一致していない。その上、プレイヤーは一応、プロデューサーということにもなっていたりするのでさらに混乱する。この視座による情報の差はかなり面倒くさい部分でもある。

話を戻す。

まずはいつも通り思い浮かんだ言葉を並べてみたのだが、思いのほかリズムがよくなってしまい、ひさびさに単語だけ並べるやつをやりたくなってしまった。これは原作への依存が高いため、二次創作短歌の手法としてはあまりよくないと思っているのだが、定期的にやりたくなってしまう手法でもあるので、とりあえずすすめていく。

よふかしよりみちとおまわり乙女心と朱に染まる空
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よふかしよりみちとおまわりいねむりまどろみゆめみがちひみつやくそくをとめ条約
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春ちかしよふかしよりみちまわりみちひみつやくそくまだゆめごこち
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あかねさすよふかしよりみちまわりみちひみつやくそくまだゆめごこち

まず漢字は硬くなりすぎて、をとめ条約の一回性や軽やかな感じが薄れてしまうためひらがなに開くことに。また【をとめ条約】を描くのに、をとめ条約を入れたら負けだとも思ったので、ほかの言葉をあれこれとまとめていく。
放課後のひととき、友人同士の秘密、ささやかな約束、女の子の時間、そこに射す一瞬の光。
青春から春の字を入れたが安直なのと、季節感が無くなるのであかねさすを採用。秋と、茜色に染まる帰りの電車の風景、居眠りをしている横顔を照らす光。そんなものを表現したかったが、単体では枕詞として機能していないので反省。あと【をとめ条約】からは離れてしまった感がある。

で、飛び道具を撃ったうえに離れてしまった気がしたのでもう一度。今度はエピソードの前半、電車パートにフォーカスしていく。放課後の、京王線の、乗換、などを出されるとリアルの思い出で情緒が死ぬかと思った。これが中央線なら私はもうここにいない。

まどろみにゆれる未知へとつれていく京王線に差し込むひかり
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あきうららまどろみをのせ揺れている京王線に差し込むひかり
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もう少し悪い子でいていいですか？京王線にあかねさすころ
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あかねさす京王線よ揺れていてまだ覚めないでをとめの時間
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まどろみよまだ覚めないで揺れていて京王線にあかねさす秋

モチーフというか、描きたいものは一首目と同じ。リアルの固有名詞を入れるのは好きだし、私的な思い出補正もあり、京王線は入れたかった。あとはひたすらこねくりまわした結果、モラトリアム感が強く出せたと思う最終型に。まどろみ、がちょっと気にはなるが、悪くないと自分では思っている。

以上です。