第十三回歌会

 まずは歌会等で言及していただいた方々、ありがとうございます。
 そして先にお詫びと言い訳を。今回準備を何もできずに歌会に突入したうえ、ヘッドフォンで音声だけ流して別の場所で作業、言及される度にタブレットを見に行くということをしていたのでクソレスポンスになっておりました。あれネタでやってたわけじゃないんです……。

 

 

「題字:飛」
飛ぶもののかたちはいつもうつくしくひとりで走る光の砂漠

 福丸さんの連作を作っているときに上の句がするっと出来てしまった歌でした。では、どこから空を見上げているかを考えていたら、ステージ(から見た客席)は砂漠のようにも見えるのではという景が出てきてこの形に。
 そして、置いていかれていて、ステージで孤独な人は誰かとなったら、緋田さんですよね、ということでこうなりました。
 ステージや芸能界は誰も助けてはくれない孤独な場所であり、隣に誰が立っていてもひとりにしかなれない断絶。明るい景だけど酷い心情というギャップと、それにあわせて視線は上から下へいくように意識はしました。

 

 

 「題字:子」(七草にちか)
子どもではいられなかっただけなので ショートケーキの苺が落ちる

 題字をどう使うかで悩んで、結局そのまんまで使うことにした歌。そして実は下の句から作った歌でした。ショートケーキのイチゴは「子ども時代」であり「たいせつなもの」の喩として使っています。もう二度と戻らないもの。子どもを題材にして暗い方にいくのはなぜだ。
 にちかさんとしたのは、七草家が父親の死で「普通の家庭」が強制終了した家で、特に年少のにちかさんは幼いだけでいられた時間が短かく、いろいろ抱え込んでいるのはエピソードの所々に見え隠れしているのでこのようになりました。
 ちなみに語尾の「なので」がにちかポイントでした。

 


 「題字:雨」(樋口円香)
傘を忘れたふりをして雨に濡れていくあなたの左肩を見ている 嫌いだ

 僕のなかではThis is 樋口円香でしたが、伝わったでしょうか。
 以下妄言です。急な雨に傘を持っていることを言い出せないままにプロデューサーがさした傘に入れられ自分が濡れるのは構わず彼女の方に傘をよせる彼のただしさがほんとうに嫌いなのにこの状況もそれを憎からず感じてしまっている自分自身も間違いなく存在しておりそんな自分は嫌いで知りたくなかったとアンビバレントな感情を抱え込んだまま濡れていく樋口円香(17)。以上です。
 なお、破調等々は樋口らしさを出したくてこの形にしています。

 


 「題字:紀」(浅倉透)
あなたは彗星の匂い 白亜紀に終わりを告げる彗星はあなたの

 樋口→浅倉の歌。
 放課後、ふたりで寄りかかりあいながらだらだらしているときに、ふいに浅倉透の香りを感じてしまったときの様子です。
 恐竜の時代は人間以前の時代ですので、大人になる前の季節というような意味で使っています。彗星はうつくしいけれど破壊をもたらすもの。遠くから来て、また遠くへ去っていくもの。あなたがいたから特別だった時間は、あなたが去ることで終わるのだろうという予感。でもまだそれは言い出せずにいる。
 なお浅倉は「いつかどっかいっちゃうひと」だと公式で描かれ続けているので、個人的に彗星モチーフで歌にすることが多いです。

 

 なお前回も今回もすべて付記なしで出しています。どこまで伝わるかのチャレンジだったり、単体の出来勝負だったりいろいろです。二次創作の歌会なので付記も含めてひとつの作品であり、武器をひとつ手放している自覚はあります。実際結果も芳しくはないですし。でも付記なしで、誰のことか考えるのは楽しくもあり。
 今回のは飛と子は作り方からも付記なしだとぶれるだろうなという予想はしていました。逆に雨と紀はがちがちに樋口と浅倉のつもりでしたので、大崎さんで受け取られたのは意外でした。(僕がアルスト弱者なせいですが……。)